
ジャンクのオーバードライブ、PEARL OD-05を購入しました。修理して普通に使えるようにしようとしたのですが、思わぬところで苦戦しました。
ということで今回は、ジャンクのPEARL OD-05に関して予想外だった点や、その結末などについて書いてみたいと思います。
目次
外観・症状
塗装の剥がれとキズが多数

パッと見で分かりますが、状態は良くないです。塗装の剥がれとキズがたくさんあります。




背面、フロント、両サイドも塗装の剥がれとキズが多数で、インプット/アウトプットジャックのナットとワッシャーはサビています。

底面もかなり傷んでいて、汚れがあります。
症状をチェック
商品説明

商品説明には「音出たがドライブコントロール関係なく歪みます」とありました。
しかし…
音出しチェック
DCジャックに電源を接続してフットスイッチを押すと、エフェクト音は普通に出て、「OVER DRIVE」ツマミも正常に反応しているように思います。
ただ、LEDが点灯しません。
9V角電池での駆動はOK
まず、電池スペースの蓋を開けると、

スポンジにサビが付いていました。おそらく、9V角電池を入れっぱなしにしていて、それがサビて移ってしまったのだと思います。

電池スナップには、白い粉が付いていました。きっと、9V角電池が液漏れしたのでしょう。

9V角電池を入れます。

開けたときには気が付かなかったのですが、蓋のネジが当たる部分にサビがありました。

フットスイッチを押すと、ちゃんと電源オンにできました(LEDが点灯しました)。
LEDの点灯条件を検証
以上のように、「DCジャックから駆動させると、エフェクト音は出る(電源オンになる)のにLEDは点灯しない」、「9V角電池から駆動させると、普通に電源オンになる(LEDが点灯する)」という、不思議な状態です。
そして、いろいろ試してみたところ、DCジャックからの駆動でLEDが点灯する状態を見つけました。

他のエフェクターを接続して、電源をデイジーチェーンにすると、DCジャックからの駆動でもLEDが点灯します。
ここから、OD-05のDCジャックは他のエフェクター経由でGNDに接続できているのではないか、つまりOD-05単体だとDCジャックからのGNDがちゃんと接続できていないのではないか、という予想をしました。
なので、DCジャックの交換をしてみたいと思います(結論から言うと、これは見当違いでした)。
修理
分解

電池の蓋を外して、

底面のネジを外します。

電池スペースにもネジが2本あります。

底面が外れました。基板が2枚ありました。

DCジャックが付いている基板のネジを外します。
しかし、

基板が取れません。


インプット/アウトプットジャックのナット(12㎜)を外してみます。
それでも基板が外れないので、「おかしいな…」と思っていろいろやっていたら、

少し力を入れたら、外れました(このとき、インプット/アウトプットジャックのナットを外す必要がなかったことに気づきました)。

基板を引き出したところ。ポテンショメーターやインプット/アウトプットジャックは、コネクターで基板に繋がっています。
このままでもDCジャックの交換はできそうなのですが、作業のやりやすさを考慮して、

基板のコネクターを外しました。
DCジャックの交換

セッティングしてフラックス(HOZAN H-722)を塗布します。

ハンダゴテとハンダ吸い取り線を当てて、ハンダを除去すると、

DCジャックが外れました。


左が交換用の新品で、右が元から付いていたものです。形と大きさ、端子のレイアウトなどは全く同じです。

交換用のDCジャックをセッティングして、ハンダ付けします。

できました。が、曲がってしまいました。
やり直しです。

今度は、ある程度真っ直ぐにできました。それにしても、ハンダ付けが下手くそです。
そして、逆の手順で組み立てて、フォーンプラグと電源を繋ぎ、フットスイッチを押してみると、

直ってませんでした(涙)。
なので、DCジャックは元に戻しました。
再度、原因を考える(振り出しに戻る)
振り出しに戻ったので、再度、原因を考えてみます。
原因は「抵抗」だった
DCジャックの回路のみにある抵抗(9V角電池の回路にはない)
基板を見て回路を辿っていると、


DCジャックのマイナス端子に繋がる回路に、抵抗があることに気づきました。これと同じものは、9V角電池の回路にはありません。
「どういうこと?」と思って調べてみると、分かりました。
このOD-05が販売されていた1980年代前半では、ACアダプターはトランス式(未安定化)のものが主流だったそうです。これは「9V」と表記されていても、無負荷時には12V~13V近くの電圧が出力される仕様だったようです。
なので、当時のエフェクターは、その高めの電圧が入ることを前提として回路に抵抗を設置し、9V付近まで電圧を落として動作するようになっていたとのこと。もちろん、OD-05もそのようになっています。
こうした設計のため、現行のスイッチング式(安定化、9V固定)のACアダプターを接続すると抵抗によって電圧が下がりすぎてしまい(6V~7V前後)、
といった症状が現れるということでした。
また、抵抗にはノイズフィルターとしての役割りもあるみたいです。
そして、冒頭で述べたように、

他のエフェクターを接続して、電源をデイジーチェーンにすると、DCジャックからの駆動でもLEDが点灯します。
これは、他のエフェクターとアースラインが共通化されることで、抵抗をバイパスして駆動しているから、ということでした。
抵抗をリード線でパイバスしてみる
そこで、ちょっと試してみます。

テスト用のリード線を使って抵抗をバイパスしてみると、

ちゃんとLEDが点灯しました。
抵抗を通る前後の電圧
抵抗を通る前と後の電圧を比較してみました。
ちなみに電源は、9VのUSB PDトリガーケーブルを使って、モバイルバッテリーから取っています。

抵抗を通る前は、9.07Vくらいです。
これが、

抵抗を通ると、5.76Vくらいに低下しました。
なので、この抵抗によって3.3Vくらい低下することになります。
音量・音痩せ・ノイズについて検証
前述の「音量が小さくなる、または音が痩せる」とノイズについても、いくつかのパターンで検証してみます。
なお、ツマミは全て12時です。
抵抗をパイパスさせるかどうかで比較
抵抗を通す(ノーマルの)場合と、テスト用のリード線でパイパスさせる場合を比較してみます(赤と黒のプローブをショートさせると、パイパスされます)。
電源は前述と同様に、9VのUSB PDトリガーケーブルを使って、モバイルバッテリーから取っています。
やはり、ノーマル時(抵抗を通って電圧が6Vくらいまで低下、LEDは点灯しない)と比較して、パイパス時(抵抗を通さないので9Vがそのまま、LEDが点灯)の方が、音が少し元気になるような感じがします。
ただし、パイパス時は、ノイズフィルターとしての役割も果たしている抵抗を通さないので、ノイズが増えてしまいます。
パワーサプライで電圧(9V、12V)を切り替える
前述のように、OD-05は高めの電圧(12V~13V近く)が入ることを前提として回路に抵抗を設置し、9V付近まで電圧を落として動作します。なので、電圧を切り替えられるパワーサプライを使って、9Vと12Vで比較してみます。
使用するパワーサプライはK.E.S KIP-001です。これの5番ポートは9V/12V/18Vで電圧の切り替えが可能となっています。
9V設定時(抵抗を通って電圧が6Vくらいまで低下し、LEDは点灯しない)と比較して、12V設定時(抵抗を通って電圧が適正の9V付近となり、LEDが点灯)の方が、音が少し元気なようです。
ノイズは、9Vと12Vのどちらの設定でも、ほとんど気になりませんでした。
トランス式のACアダプターを使ってみる
使用するのは、かなり昔に購入したトランス式(未安定化)のACアダプター、SOUND HOUSE PTD41090-0500-10です。OD-05とは、年代が近いはず。
まず、DCプラグの電圧を測ってみると、14.1Vくらいでした。これが抵抗を通っても11Vくらいになります(なのでLEDは点灯)。
そして、電圧が高い分、音もかなり元気になりました。
(※)現行のスイッチング式のACアダプターも試してみる
ついでに、現行のスイッチング式のACアダプター、VISUAL SOUND 1 SPOTも試してみます。
まず、DCプラグの電圧を測ってみると、9.49Vでした。これが抵抗を通ると、6Vくらいまで低下します(なのでLEDは点灯しない)。
音は、やはり電圧が低い分、大人しめです。
そして、なぜかノイズが酷いです。特に、弦に触れていない(弦アースが取れてない)ときにノイズが大きくなります。また、理由はよく分かりませんが、ギターの位置によってノイズがさらに大きくなります。
商品説明にあった「ドライブコントロール関係なく歪みます」は、このノイズが関係しているのでしょうか?
解決策
以上のことから、次の2つの解決策によって普通に使える、ということになります。
しかし、これでは面白くないので、ちょっとした改造をしてみようと思います。
改造(バイパスのスイッチを付ける)
抵抗をバイパスするスイッチを取り付けてみます。
用意したのはこちら。

スライドスイッチ(2回路2接点)、リード線、熱収縮チューブです。これでスイッチをつくって、電池スペースに収まるようにします。

抵抗の2本の足がハンダ付けされている部分に、リード線をハンダ付けします。

リード線に熱収縮チューブを通して、スライドスイッチをハンダ付けします。

熱収縮チューブをヒートガンで縮めたら、完成です。
と思ったのですが、このままだと剥き出しの接点が筐体に接触して予期せぬ導通が起こってしまう可能性があります。なので、端子を熱収縮チューブで覆うことにしました。
しかし、そのまま端子に熱収縮チューブをはめるとすぐ抜けてしまいます。なので、

先日自作エフェクターをつくったときに出た抵抗の足の切れ端を、端子の穴に巻き付けて、その上に熱収縮チューブをはめることにしました。

これでスイッチの完成です。

底面のカバーを付けてみると、スイッチはちゃんと電池スペースから出ています。
それでは、テストをしてみます。電源は、9VのUSB PDトリガーケーブルを使って、モバイルバッテリーから取っています。通常だと、この状態では電源オンにしてもLEDは点灯しません。

スイッチをパイパス側(画像では上側)にして、

電源オンにすると、LEDが点灯しました。成功です。
クリーニング・塗装のタッチアップ・サビ取り
塗装が剥げているので、そこをタッチアップします。また、電池スペースやナットのサビ取り、全体のクリーニングもしていきます。
分解

ノブを引き抜きます。ちょっと力を入れれば抜けます。

ポテンショメーターのナット(11㎜)を外します。


フットスイッチの付いている基板の3本のネジを外します。

基板とフットスイッチのカバーが外れました。
クリーニング
基板とジャックのクリーニング

基板の、特にフットスイッチ周辺にホコリがたまっていたので、ブラッシングして落とします。

ポテンショメーターとインプット/アウトプット/DCジャックのクリーニングには、ELECTRO-HARMONIXの接点復活剤、METAL CONTACTを使います(20年以上前に買ったのが、まだ残ってる)。ギター/ベースのポッド、エフェクターのコントロール部やジャックなどのクリーニングに最適とのことです。


ポテンショメーターの穴に少量だけ吹いて、シャフトをグリグリ回します。


インプット/アウトプットジャックは、METAL CONTACTを綿棒に吹いてクリーニングします。

DCジャックは、METAL CONTACTをキムワイプに吹いてクリーニングします。
電池スナップの端子をクリーニング


ドロップ容器に入れた無水エタノールを綿棒に垂らして、

電池スナップの端子をクリーニングします。
しかし、これだけでは汚れが落ちなかったので、

カッターの刃で削りました。

電池スナップの端子のクリーニングが完了しました。
筐体とフットスイッチカバーをクリーニング

ドロップ容器に入れた無水エタノールをキムワイプに垂らして、


筐体とフットスイッチのカバーをクリーニングしました。
ノブをクリーニング

無水エタノールを綿棒に付けて、ノブをクリーニングします。

黒いのであまり分かりませんが、綿棒にはけっこうな汚れが付きました。

ノブのクリーニングが完了です。
底面カバーと電池スペースの蓋をクリーニング

底面カバーを、無水エタノールを垂らしたキムワイプでクリーニングします。

底面のゴムにこびり付いた汚れを、スクレーパーでこそぎ落とします。


シールはがし液とスクレーパーを使って、サビが付いた電池スペースのスポンジを剥がします。
ちなみに、このシールはがし液には、独特の臭いがあります。

電池スペースのスポンジを剥がれました。

電池スペースの蓋を、無水エタノールと歯ブラシでクリーニングします。

キレイになりました。

電池スペースの蓋のスポンジにもサビが付いていました。これも剥がしてしまいます。

こちらには、シリコンオフを使ってみます。

シリコンオフを吹いて、スクレーパーでスポンジを剥がします。

スポンジが取れたら、サビがありました。
塗装のタッチアップ

筐体をシリコンオフで脱脂します。

タッチペン つや消し黒を使います。
ちなみに、タッチアップ作業の前半部分は、撮影し忘れました(涙)。なので、

後半の、縁部分の塗装の画像を貼っておきます。

筐体のタッチアップができました。
電池スペースのサビ取り

赤サビ転換防錆剤を使います。



サビのある部分に塗布しました。


乾いたら、デコボコになってました。赤サビも残ってるし。やり直します。

ここだけは許容範囲です。



結局、電池スペースと蓋は紙やすりで削って、タッチペン つや消し黒で再塗装しました。そんなにキレイにはできませんでしたが、これでやめておきます。
電池スペースにスポンジを貼り付け

電池スペースにスポンジシートを貼り付けました。

蓋にもスポンジを貼り付けました。

実は、台所用のスポンジをカットしたものです。柔らかいので、カットするのが難しかったです。
ナットとワッシャーのサビ取り

インプット/アウトプットジャックと、ポテンショメーターのナットとワッシャーがサビているので、取ります。

ネジザウルスリキッドを使います。

ナットとワッシャーを小瓶に入れてネジザウルスリキッドを垂らすと、透明な液はすぐに紫色に変わりました。
このまま30分くらい放置です。

ナットとワッシャーのサビ取りが完了しました。ザラザラが残っていますが、筐体にキズがたくさんあるので、これくらいで丁度いい感じだと思います。
組み立て
後は、逆の手順で組み立てて、完成です。







試奏
それでは、試奏してみます。
電源は、9VのUSB PDトリガーケーブルを使って、モバイルバッテリーから取っています。
スイッチによって、抵抗をバイパスさせています。
EQ GAINとFREQUENCYのツマミがあるのが特徴的で、なかなか楽しいエフェクターですね。
おわりに
今回は、DCジャックから給電した場合にLEDが点灯しない問題について、紆余曲折があったうえで、ようやく抵抗が原因だったことが分かりました。でも、そうやって原因を調べていると、いろんなことを知ることができ、また新たな対応策を考えて実施してみたりなど、なかなか面白かったです。これぞジャンクの醍醐味ですね。

