エレキギターをアンプに繋げて弾く際に、通常はシールド(シールドケーブル)を使いますよね。しかし、シールドが絡まったりなど、意外とストレスが溜まるのではないでしょうか。そんなときに試してみたいのが、ワイヤレスシステムです。
というわけで今回は、ギター用のワイヤレスシステムの選び方を説明したうえで、現在市販されている製品の中から選んだおすすめを紹介したいと思います。
ギターワイヤレスシステムについて(基本的なしくみ、メリット・デメリット)
まずは、ギターワイヤレスシステムについて、その基本的なしくみ、メリット・デメリットについて見ていきます。
ワイヤレスシステムの基本的なしくみ
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そもそもエレキギターを弾いてアンプで音を出す際には、弦の振動をピックアップによって電気信号に変換し、その電気信号をアンプに送って、アンプで増幅してスピーカーに送り、スピーカーで電気信号を振動(音)に戻して出力する、という流れを辿ります。
上記のうち、エレキギターから電気信号をアンプに送る過程で一般的に用いられるのが、シールド(シールドケーブル)です。この部分を電波によって送信するのが、ギターワイヤレスシステムになります。
メリット・デメリット
ギターワイヤレスシステムには、次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
ギターを弾き始めるときには巻いてあるシールドを出して伸ばして接続し、弾き終わったらシールドを巻いて仕舞うという作業は、シールドが絡まったりしてけっこう面倒です。特に、1日に何度もこの作業を行うとなると、「めんどくさいから、やっぱり弾くのやめた!」ということになりかねません。
また、回転イスに座りながらギターを弾いていて、イスを動かした際にキャスターでシールドを踏んでしまって煩わしい、ということもよくあるかと思います。
こうしたことは、ギターワイヤレスシステムですっかり解決できてしまいます。
ギターの練習中に、少し離れたところにある物に手を伸ばす際に、ギターをスタンドに掛けてからその物を取って、再度スタンドからギターを手に取る、というようになりますよね。この「ギターをスタンドに掛ける・再び手に取る」という動作は、意外と(何度も繰り返すと特に)面倒なものです。
また、ライブハウスのステージ上でのパフォーマンスについては、シールドに繋がれていると、どうしても動きに制限が出てしまいます。
こうしたことについても、ギターワイヤレスシステムを使うことでシールドによる制限がなくなって、快適に動き回ることができるようになります。
デメリット
電気信号と電波の変換回路を経由する際には、どうしても信号のロスが生じてしまいます。これがアンプから出る音に影響して、音痩せしてしまう(特に高音域が削られる)ことがあります。
ただし、これは「聴き比べれば違うかも…」くらいのレベルなので、そこまで心配する必要はないでしょう(それよりも、ギター、エフェクター、アンプの各種つまみ〔トーン、トレブル、ゲインなど〕の設定の方が、よほど音質を変化させます)。
電気信号と電波の変換には、どうしても時間がかかってしまうため、音の遅延(レイテンシー)が生じてしまいます。ただし、その時間はほんの僅かで、ほとんど分からないレベルです(詳しくは後述)。
ギターワイヤレスシステムで用いられる周波数は、5.2GHz帯のものもありますが、どちらかと言うと2.4GHz帯が主流です。そして、一般的に広く使われているWi-FiやBluetoothでも、やはり2.4GHz帯が用いられています。そのため、Wi-FiやBluetoothのデバイスが近くにあったり、それらの接続台数が多かったりすると、電波干渉して音が途切れてしまうことがあります。
また、ギターワイヤレスシステムの送信機と受信機の間に障害物(壁など)があると、電波が届かずに、やはり音が途切れてしまうことがあります。
ギターワイヤレスシステムでは、バッテリーを内蔵した充電式の製品が多くあります。これには、もちろんバッテリー切れがあり、切れると音が鳴らなくなります。また、使用に備えてバッテリーを充電しておく手間まが必要になります。
ギターワイヤレスシステムの選び方
ここからは、ギターワイヤレスシステムの選び方について見ていきます。
遅延(レイテンシー)は小さい方が優秀
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前述のように、ギターワイヤレスシステムでは電気信号と電波の変換を行いますが、このときにどうしても時間がかかるため、音の遅延(レイテンシー)が生じてしまいます。この単位にはms(ミリセカンド、1,000分の1秒)が用いられます。
もし、レイテンシーが大きいと(だいたい10msを超えると)、ギターの弦を弾いて、その音がアンプから出るまでのタイムラグによって、弾いている人には違和感があります。これは避けたいですよね。
そして、ほとんどのギターワイヤレスシステムで、レイテンシーは10ms以下となっています。10msくらいでも違和感はほとんどないのですが、できれば少ないのに越したことはありません。もちろん、レイテンシーが少ない製品は価格も高くなるので、このパランスを考えて製品を選びましょう。
最大チャンネル数を確認
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最大チャンネル数とは、同じ周波数帯で同時に接続できるデバイスの最大数を示します。前述のように、ギターワイヤレスシステムで用いられる周波数は、2.4GHz帯が主流です。この帯域の範囲内で、いくつのデバイスが同時に接続できるか、ということになります。
たとえば、バンド内でワイヤレスシステムを使用するメンバーが4人いる場合、最低でも4チャンネルが必要になります。もし、最大チャンネル数を超えて使用してしまうと、電波が混線してしまいます。なので、ワイヤレスシステムを使用するメンバー数よりも多い最大チャンネル数の製品を選びましょう。
使用環境に合った通信距離の製品に(30mくらいが標準)
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前述のように、ギターワイヤレスシステムでは電気信号を電波によってアンプに送ります。そして、電波には届く距離があり、これを超えると電波が届かなくなって音が途切れてしまいます。なので、使用する環境に合わせた通信距離の製品を選びましょう。
なお、一般的なギターワイヤレスシステムの通信距離30mくらいです。これだけあれば、スタジオや小さなライブハウスなら、通常は音が途切れることはないですね。
バッテリー持続時間と充電時間を考慮
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前述のように、ギターワイヤレスシステムでは、バッテリーを内蔵した充電式の製品が多くあります。このバッテリー容量(連続使用時間)と充電時間は、製品によってもちろん異なります。なので、連続使用時間と充電時間を確認しましょう。
充電用USBポートの形状はUSB-Cがオススメ
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少し古い仕様のギターワイヤレスシステムだと、充電用ポートにmicroUSBが採用されているものもあります。microUSBは、既に廃れつつあるので、これを選ぶのは賢明とは言えません。
そして、USB Type-C(USB-C)が比較的新しい規格で、既に一般的になっています。なので、これから購入するならUSB-Cポートが搭載されている製品にしましょう。
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左がUSB-A、右がUSB-C
USB-Cのコネクタは、従来のUSB-Aよりも小さくなっています。また、USB-Cは上下左右が対照の形状であるため、向きを気にせずに接続できます(USB-Aでは「向きが逆で差し直し」ということがよくありましたが、USB-Cでは解消されています)。
microUSB:既に廃れつつある…
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microUSBは以前からある古い規格で、既に廃れつつあります。現在でも、microUSBケーブルは販売されていますが、ほぼ互換性を保つためと言っていいでしょう。なので、これから購入するなら、microUSBではなく、USB-Cの製品にするのが良いですね。
ギターワイヤレスシステム おすすめランキング
ここからは、ギターワイヤレスシステムのおすすめ製品をランキング形式で紹介していきます。今回は、多くのギタリストが気になるであろう、レイテンシーの少ない順にしています。
第1位:BOSS WL-50
【レイテンシーは2.3ms】エフェクターボードに組み込める
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レイテンシーは2.3msという、かなり優秀な製品。最大チャンネル数は14チャンネルで、通信距離は約20mです。トランスミッターのバッテリー持続時間は7時間で、レシーバーは単三形アルカリ乾電池を2本またはACアダプターを使用します。そして、レシーバーにトランスミッターを差し込むことで、レシーバーの充電をすることができます(レシーバーのmicroUSBでも充電が可能)。
また、見た目からも分かるように、エフェクターボードに組み込んで使えるということが大きな特徴。他のエフェクターと並べて配置して、他のエフェクターと同じようにレシーバーの電源を取ることになります。なかなか使い勝手が良さそうですね。
ちなみに、以下のようなレシーバーが小型化されたモデルもあります。レイテンシーは同じく2.3ms、バッテリー持続時間も同じく7時間です。充電時間は、レシーバーのみの充電は約3時間、トランスミッターと同時充電では約4時間となっています(レシーバーとトランスミッターを合体させると同時充電が可能)。充電用USBポートはmicroUSBです。
BOSS/WL-20 ギターワイヤレスシステム
25,300円(税込)
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第2位:LEKATO WS-70
4,399円(税込)
【レイテンシーは3ms】通信距離は約40m、LEDでバッテリー残量表示、プラグが190°回転
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レイテンシーは3ms未満という、かなり優秀な製品。この価格帯でこの低遅延を実現しているのは驚きです。そして、最大チャンネル数は70チャンネルというのも、かなり凄いスペックです。通信距離は約40mと、こちらも他の製品と比較して長くなっています。
バッテリー持続時間は6時間で、充電用USBポートはmicroUSBです(USB-Cでないのはマイナスポイント)。バッテリー残量を4つのLEDで表示してくれます。プラグは190°回転し、さまざまなタイプのギターに適応します。
第3位:LEKATO BEI-M01471
【レイテンシーは5ms未満】バッテリー持続時間は8時間、プラグが220°回転、大きめのLEDライトで充電状態を確認
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レイテンシーは5ms未満で、なかなか優秀な製品です。最大チャンネル数は4チャンネル、通信距離は約30m。バッテリー持続時間は8時間で、これは比較的長いですね。充電用USBポートはmicroUSBです(USB-Cでないのはマイナスポイント)。
特徴としては、プラグ部分が220°回転する構造となっていることがあげられます。さまざまな種類のギターのジャックに刺すことができ、刺した状態でも邪魔にならない位置に調節することができます。また、大きめのLEDライトが装備されていて、充電状態(充電中は黄色で点灯、フル充電で黄色が消灯、低電力時は黄色で点滅)を示してくれます。
第4位:LEKATO WS-90
6,399円(税込)
【レイテンシーは5.6ms】バッテリー残量をLED表示、プラグが190°回転
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レイテンシーは5.6msという、なかなかの速度の製品。最大チャンネル数は4チャンネル、通信距離は約30mです。バッテリー持続時間は8時間で、充電用USBポートはmicroUSBです(USB-Cでないのはマイナスポイント)。そして、バッテリー残量を示すLEDが4つ装備されているので、残りが一目で分かります。
プラグは190°回転可能で、さまざまな楽器にワイヤレスで適応できます。
第5位:XVIVE XV-U2
【レイテンシーは6ms未満】XVIVEのクールなデザイン
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レイテンシーは6msという、なかなかの速度の製品。最大チャンネル数は4チャンネル、通信距離は約30mです。バッテリー持続時間は5時間で、充電時間は1.5時間、充電用USBポートはmicroUSBです(USB-Cでないのはマイナスポイント)。
XVIVEというミュージシャンには知られたブランドなので、安心感がありますし、やはりデザインが秀逸です。プラグも回転するので、さまざまなタイプのギターに適応します。ただし、価格は高いですね…。
紹介しているのはカーボンで、他のカラーバリエーションとしてホワイト、3トーンサンバースト、Black & White Marble、Blue Marble、Burgundy、Gold、シルバー、ナチュラル、ブラック、ブルー、レッドもあります。
第6位:LEKATO SWL-M00601
【レイテンシーは6ms】プラグが220°回転、独特のデザイン
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レイテンシーは6msという、なかなかの速度の製品。最大チャンネル数は4チャンネル、通信距離は約30mです。バッテリー持続時間は5時間で、充電用USBポートはmicroUSBです(USB-Cでないのはマイナスポイント)。
プラグは220°回転し、さまざまなタイプのギターに適応。そして、くびれのある独特のデザインをしているのが興味深いですね。
第7位:LEKATO WS-100
【レイテンシーは6.7ms】充電用USB-Cポート、ポータブル充電ボックスが付属、3.5㎜プラグでも使用可、プラグが190°回転
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レイテンシーは6.7msという、まあまあの速度の製品。最大チャンネル数は4チャンネル、通信距離は約30mです。バッテリー持続時間は6時間で、充電用USBポートはUSB-Cです。
大きな特徴は、ポータブル充電ボックスが付属していること。ポータブル充電ボックスをUSBケーブルで電源アダプター(別売り)に接続し、トランスミッターとレシーバーを収納しておくことで充電することができます。また、プラグの形状は基本が3.5㎜で、付属のアダプターによって6.35㎜に変換することができます。プラグは190°回転が可能となっています。
第8位:LEKATO WS-60
【レイテンシーは12ms以下】3.5㎜と6.35㎜ステレオとモノラルプラグ付き、プラグが280°回転
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レイテンシーは12ms以下という製品。これは、少し遅い部類に入りますね。そして、最大チャンネル数は6チャンネル、通信距離は約30mです。バッテリー持続時間は5時間で、充電時間は1.5時間、充電用USBポートはmicroUSBです(USB-Cでないのはマイナスポイント)。
特徴としては、プラグの形状が基本は3.5㎜のステレオで、付属のアダプターによって6.35㎜に変換できる点があげられます。変換アダプターは、ステレオとモノラルの2種類。なので、3.5㎜のプラグを使えば、ギター以外の機器でもワイヤレスを実現することができます。また、プラグ部分が280°回転する構造となっていて、使用するギターのジャックの形状にフィットすることができます。
第9位:Getaria GWS-8
【レイテンシーは12ms】充電用USB-Cポート、プラグが280°回転
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レイテンシーは12msという、少し遅い部類の製品。最大チャンネル数は6チャンネル、通信距離は約30mです。バッテリー持続時間は5時間で、充電用USBポートはUSB-Cです。USB-Cポートにこだわるユーザーに適応します。
そして、プラグが280°回転するので、ギターのジャックの位置などにあまり影響を受けずに装着することができます。
第10位:XIAOKOA U12DX
【レイテンシーは記載なし】大きなLCDディスプレイを搭載、プラグが280°回転、3.5㎜変換アダプターが付属
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まず、レイテンシーについては記載なしです。そして、最大チャンネル数は15チャンネルで、通信距離は約50mです。これらの数値は、なかなか優秀ですね。バッテリー持続時間は6時間で、充電時間は2時間、充電用USBポートはmicroUSBです(USB-Cでないのはマイナスポイント)。
大きな特徴は、やはり全面のLCDディスプレイですね、ここにはチャンネル、ボリューム、バッテリー残量を大きな文字で表示することができて、かなり視認性は良さそう。また、プラグは280°回転するので、ギターのタイプを問わずに接続することができます。さらに、レシーバー用に3.5㎜変換アダプターが付属し、接続する機器の幅が広がります。
おわりに
今回は、ギターワイヤレスシステムのおすすめ製品を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
ギターワイヤレスシステムは結構昔からあるのですが、価格がビックリするくらい高くて、手が届かなかった記憶があります。しかし、現在は手頃な価格になり、さまざまな製品が出ていて、改めてビックリです。なので、上記を参考にして自分に合うギターワイヤレスシステムを入手して、ケーブルに囚われずに音楽を楽しんでくださいね。