高速伝送が魅力のM.2 SSDの大きな問題が発熱です。これを解決するために日々くふうを重ねているユーザー必見なのが、M.2 SSD用のクーラー(冷却ファン+ヒートシンク)です。
というわけで今回は、M.2 SSD用クーラーを選ぶ際にポイントとなる点を説明したうえで、市販されている中からピックアップしたおすすめを紹介したいと思います。
目次
M.2 SSDの発熱について
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そもそも、SSDとは「Solid State Drive」(ソリッドステートドライブ)の略です。「ソリッドステート」は、直訳すると「固体状態」で、この場合は固体を利用した電子回路・装置のことを指しています(空間を利用する「真空管」に対して用いられます)。また、可動する個所のない装置の意味としても用いられます。
そして、SSDではフラッシュメモリを用いて、ストレージ(データの保存場所)を構成しています。「フラッシュメモリ」とは、電力が供給されていなくてもデータの保持が可能な(不揮発性の)半導体メモリのことです。
それでは以下に、M.2 SSDが発熱することについて見ていきましょう。
M.2 SSD(PCIe/NVMe接続)は速い分、発熱がスゴイ!
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M.2 SSDにはPCIe/NVMe接続とSATA3.0接続のものがあり、前者の方が速度に優れます。
たとえば、M.2 SSDのスペック上のシーケンシャル(連続)の速度を見てみると、SATA3.0はリード560MB/s・ライト510MB/sなどで、PCIe4.0×4/NVMeはリード7,000MB/s・ライト5,000MB/sなど、PCIe5.0×4/NVMeはリード12,400MB/s・ライト11,800MB/sなどです。
そして、スピードが速い分、PCIe/NVMe接続のM.2 SSDは発熱がスゴです!。
●PCIe
まず、「PCI」は、「Peripheral Component Interconnect」の略で、CPUと周辺機器(ペリフェラル)との間をつなぐ通信を行うバスアーキテクチャのひとつ。この帯域幅を拡張したのが、「PCIe(PCI Express)」になります。
なお、現在主流のPCIeのリビジョンは「4.0」、「5.0」です。1レーンあたりの転送速度は「4.0」は「16GT/s」、「5.0」は「32GT/s」というように高速になっていきます。
また、PCIeは複数のレーンを束ねて高速化することができます。これを4レーン束ねたのが「×4」と表記されているもの。ちなみに、グラフィックボードではさらに高速な「×16」が採用されています。
●NVMe
「NVM」は「Non-Volatile Memory」で、日本語訳は「不揮発性メモリ」です。SSDを構成する「フラッシュメモリ」(電力供給がなくてもデータ保持が可能)は、これに含まれます。この「NVM」を「PCIe」バスを介してPCと高速接続するプロトコルが「NVMe(NVM Express)」です。
サーマルスロットリングを防いで高速転送を維持するためにクーラーで冷やす
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PCIe/NVMe接続のM.2 SSDには通常、サーマルスロットリングが搭載されています。これは、温度が上がり過ぎた場合に、性能を落として製品の破損を防ぐ技術のこと。なので、負荷がかかって高温になると転送速度が低下してしまいます。
これを回避して、高負荷時でも本来の性能を発揮するためには、クーラー(冷却ファン+ヒートシンク)で冷やすといった対策が必要というわけです。
M.2 SSD用クーラーの選び方
ここからは、M.2 SSD用クーラーの選び方について見ていきます。
PCケース内のクリアランスに合った高さの製品に
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冷却ファン+ヒートシンクで構成されるM.2 SSD用クーラーは、その構成パーツのために、ある程度の高さが出てしまいます。製品によってさまざまですが、小型のものだと高さ14㎜程度で、大型のものだと高さ50㎜以上もあるものもあります。
ちなみに、小型のM.2 SSD用クーラーでは、高さを抑えるために、シロッコファンを搭載していることが多いです。シロッコファンとは、筒状の羽が回転して空気を吸い込み、ダクトから排気する、という構造のファンで、一般的なプロペラファンに比べてノイズが小さい、排気の方向をコントロールしやすいといったメリットがあります。
そして、大型のものを設置する場合は当然、PCケース内の空間もそれなりに必要になってきますよね。なので、PCケース内の取り付ける位置と、他のパーツとのクリアランスを考慮したうえで、導入する製品を選びましょう。
ヒートパイプを採用した製品は冷却効率が良い
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上の写真のパイプが「ヒートパイプ」で、中には作動液(揮発性の液体)が入っています。作動液はM.2 SSDを冷却して、同時に温められて気化し、ヒートシンク & 冷却ファンのある方に送られて、そこで冷却されて液化し、再びM.2 SSDのところに戻る、というように循環します。こうすることで、M.2 SSDの熱をヒートシンク全体に伝えて、効率良く冷却できます。
ただし、ヒートパイプがある分、製品が大きくなる傾向があるので、前述のように他のパーツとのクリアランスも含めて検討しましょう。
基本はSSDの両面を冷却する仕様
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M.2 SSD用クーラーは基本的に、上側のヒートシンクと下側のベースでM.2 SSDを挟み込む仕様となっています。これによって、M.2 SSDを両面から冷却することができるので、強い冷却効果が得られます。また、両面実装のM.2 SSD(基盤の両面にチップが搭載されたもの)の冷却にも最適と言えるでしょう。
ただし、上下から挟み込んでのネジ止めとなるため、「お手軽に取り付け」というわけにはいかず、少し手間がかかるかもしれません。
ヒートシンクは好みの色でOK(何色でも放熱性能はほぼ同じ)
M.2 SSD用クーラーのものに限りませんが、ヒートシンクには通常「アルマイト加工」が施されていて、この加工には白色や黒色などカラーバリエーションがあります。厳密には黒色の方が放熱性能も高くなるのですが、この差が出るのは1,000℃以上の高温となった場合です。M.2 SSDは、高負荷時でも70~80℃くらいなので、ヒートシンクが何色でもほぼ変わりはないと言えます。なので、ヒートシンクは好みの色を選んでOKですね。
アルマイト加工とは、極々簡単に言うと、陽極(+極)で電解処理をして、表面を保護する酸化アルミニウム皮膜を生成する加工のことです。これを施すと表面が艶消しになり、熱(赤外線)の反射率が低下して、その代わりに吸収率が上がります。吸収率=放射率なので、アルマイト加工をした方がヒートシンクの放熱性能は高くなります。
ファンの風量、回転数、ノイズレベルを確認
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M.2 SSD用クーラーに搭載されている冷却ファンの性能については、以下の点をチェックしましょう。
そして、ファンは直径と厚みが大きければ、同じCFMでもrpmを抑えることができて、dB(A)が小さくなります。
【小型】M.2 SSD用クーラー おすすめ
ここからは、M.2 SSD用クーラーのおすすめ製品を紹介していきます。まずは、小型の製品を紹介し、その後に大型の製品、超大型の製品と続きます。
外形寸法では、特に“高さ”がPCケースに組み込む際に重要となるので、これをよく確認しましょう。
waves M.2 SSD ファン内蔵 クーラー
【高さ10㎜、シロッコファン】ファン搭載でもかなりの薄さ、電源はSATAポートから供給
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ヒートシンクに、小型のシロッコファンを搭載した製品です。それでも、高さは僅か10㎜しかないので、他のパーツとの干渉のリスクはかなり低いですね。ファンの電源ケーブルには、SATA15品への変換基盤が付いているため、マザーボードのSATAポートから電源を取ることができます。最近は(M.2 SSDの利用が増えて)SATAポートが余ることが多いと思うので、それを有効活用できて、マザーボード上のファンコネクタを節約できるのは嬉しいですね。
Mulanimo ヒートシンク 冷却ファン付き
【高さ11.5㎜、小型高速シロッコファン】アルミと純銅を組み合わせたヒートシンク
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ヒートシンクに、小型の高速シロッコファン(回転数は10,000rpm ±10%)を搭載した製品です。ヒートシンクの素材は、熱伝導率の高いアルミニウム合金と、更に高い純銅の組み合わせとなっていて、特に発熱が大きいチップの部分に純銅が接触するようなレイアウトとなっています。これにより、M.2 SSDからの熱が最大60%削減されます(メーカー)。
GRAUGEAR G-M2HS08-F
【高さ14㎜、20㎜シロッコファン】銅製ヒートパイプをヒートシンクとM.2 SSDで挟み込む構造
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20㎜のシロッコファンを搭載し、1本の銅製ヒートパイプをヒートシンクとM.2 SSDで挟み込む形になる製品です。ヒートパイプはM.2 SSDに直に接触する「ダイレクトタッチ」となっていて、熱交換の効率が良くなっています。また、ヒートシンクは表面積を増やす形に設計されていて、優れた放熱性能を備えています。これらにより、M.2 SSDの温度を50%以上ダウンさせてくれます(メーカー)。
Tsumuku M.2 SSD冷却ファン(98826040)
【小型のターボ冷却シロッコファン】ビルトインのOLEDスクリーンで温度を表示
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小型のターボ冷却シロッコファンを装備した製品で、特徴は何と言ってもOLEDスクリーンがビルトインされていることです。ここでヒートシンクの温度をリアルタイムに表示してくれます。クーラーの冷却効果を数字で具体的に知りたいという欲求を満たしてくれます。
紹介しているのはブラックで、他のカラーバリエーションとしてシルバーもあります。
【大型】M.2 SSD用クーラー おすすめ
続きまして、大型のM.2 SSD用クーラーのおすすめ製品を紹介していきます。大型のものは冷却効果が高いですが、その分設置のためのスペースが必要になるので、この点を考慮しましょう。
長尾製作所 SS-M2S-HS03
【高さ19.5㎜】冷却ファンが付属したU字型、2㎜厚のアルミ製、
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放熱性の高い2㎜厚のアルミニウムを採用した、U字型ヒートシンク。小型で静音性の高い冷却ファンが1つ付属し、U字をまたぐように搭載できるので、かなり高い冷却性能が期待できます。
冷却ファンはX-FAN社製 RDM2510Sで、低ノイズ・低振動・高耐久性を実現する中空ベアリングを採用したモデルです。取付位置は上の写真のように3パターンあるので、M.2 SSDのチップの位置に合わせたり、CPUクーラーなど他のパーツと干渉しない位置にオフセットしたりなど、装着の際の自由度が高くなっています。
放熱シリコンパッドは熱伝導率が極めて高く、柔らかくて細かな凹凸にも密着する「超低硬度放熱シリコンパッド」を採用。取付けについては、耐熱絶縁テープ(微粘着で再剥離可能)で巻きつけるようにして固定します。
さらに下の写真のように、オプションでファンを追加して「デュアルファン」とし、冷却性能をさらに高めることもできます。
Small 冷却ファン for RDM2510S 12V 0.08A 2線 25mm,冷却ファン RDM2510S 2線 25x25x10mm
2,553円(税込)
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GRAUGEAR G-M2HS03-F
【高さ34㎜、25㎜冷却ファン】冷却ファンがサイドからヒートシンクを冷やす、ヒートパイプとトンネル構造で無駄のないエアフロー
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25㎜冷却ファンがヒートシンクのサイドに設置されていて、2階建てでヒートパイプで連結されたヒートシンクの間をエアフローが通って冷却するというシステムの製品です。ヒートシンクの面積が大きく、ヒートパイプによって熱が分散されて、そこにエアフローが効率よく当たるので、かなりの冷却効果が期待できそうです。
Thermalright HR10 2280 pro
【高さ43.8㎜、30㎜冷却ファン】ヒートシンクと放熱フィンをヒートパイプで結合した2階建て構造
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M.2 SSDに取り付ける小型ヒートシンクと、30㎜冷却ファンが搭載された放熱フィンを、5㎜のヒートパイプで連結させた製品です。この2階建て構造により、M.2 SSDから発せられた熱を、小型ヒートシンクとヒートパイプを通じて放熱フィンに送ってファンで冷却することができます。
ただ、ヒートパイプが左右に出っ張っているため、長さが90.3㎜と他の製品より長くなっており、ここが他のパーツと干渉しないかを自然に確認しておいた方が良いですね。
ineo M-3 ファン
【高さ52㎜、30㎜冷却ファン】「ダイレクトタッチ」のヒートパイプで放熱フィンに熱を移動
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M.2 SSD上に設置するヒートシンクには、M.2 SSDに直に接触する「ダイレクトタッチ」の純銅製ヒートパイプが2本あり、それを通じて上部の放熱フィンに熱を移動させて30㎜冷却ファンで冷却する、という仕組みの製品です。
ただ、上部のヒートシンクはなかなかの大きさがあり、全体の高さは52㎜となっているので、M.2 SSDの隣にグラフィックボードなどがあると設置は厳しいかもしれません。
【超大型】M.2 SSD用クーラー おすすめ
最後に、超大型のM.2 SSD用クーラーのおすすめ製品を紹介していきます。ここまでの大きさになると、導入できるのはかなり特殊なPCケースまたはマザーボードを使っている場合になるかもしれませんね。
akasa A-M2HS03-BK
【高さ72.53㎜】強力なエアフローを生むシロッコファンを搭載
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M.2 SSDに接したヒートシンクに、空気を強力に送り出す巨大なシロッコファン(筒状の羽が回転して空気を吸い込み、ダクトから排気する構造)を搭載した製品です(まるでカタツムリのような外観が印象的ですね)。シロッコファンはサイドから吸い込んだエアーをM.2 SSDの方向に吹き出すので、エアフローが効果的に冷却対象に当たることが期待できます。冷却装置のない状態と比較すると、60%程度の冷却効果が見込めるでしょう(メーカーのデータグラフより)。
そして、気になる高さは72.53㎜となっているので、PCケース内のスペースはかなり占有しそうですね。
JIUSHARK M2-THREE
【高さ82㎜、60㎜冷却ファン】大きなファンで放熱フィンを冷却、「ダイレクトタッチ」のヒートパイプを採用
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ステンレス製のベース部とアルミ製の放熱フィンを、銅製のヒートパイプ(ニッケルメッキ処理)で連結し、60㎜のファンで冷却する製品です。このサイズの冷却ファンを搭載するM.2 SSD用クーラーは他にありませんね(まるでCPUクーラーかと思ってしまいます)。ヒートパイプはM.2 SSDに直に接触する「ダイレクトタッチ」方式となっているので、熱を効率的に伝えることができます。
そして、高さは82㎜となっていて、さらに奥行きがファンを含むと35.5㎜もあるため、隣のPCIeスロットに拡張カードを設置している場合などには設置は厳しいかもしれません。
おわりに
今回は、M.2 SSD用クーラーのおすすめ製品を「小型」、「大型」、「超大型」で分けて紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
一般的なPCケースやパーツ構成では、大きなM.2 SSD用クーラーの導入はなかなか難しいかもしれませんが、上記を参考にして是非とも導入し、M.2 SSDの発熱問題を解決してくださいね。