PCを組むのに欠かせないCPUクーラーですが、小型PCの場合は、背の高いCPUクーラーだとケース内に収まらないこともありますよね。そんなときに必要なのが、薄型のCPUクーラーです。
というわけで今回は、CPUクーラーの基本的な事柄などを解説したうえで、薄型CPUクーラーのおすすめを紹介したいと思います。
薄型CPUクーラーの選び方
それでは早速、薄型CPUクーラーの選び方を見ていきましょう。
トップフローのCPUクーラーが薄型
CPUクーラーのうち、薄型となるのは基本的にトップフローのものとなります。逆に、サイドフローのものは背が高くなります。これらの違いと、それぞれのメリットとデメリットを以下に見ていきます。
トップフローはマザーボードに対してファンが水平、故に薄型
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トップフローは、マザーボードに対してファンが水平に位置するタイプなので、基本的には薄型となります(大きな放熱フィンにより、背が高いものもあり)。メリット・デメリットとしては、次のような点があげられます。
サイドフローはマザーボードに対してファンが直角、故に背が高くなる
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サイドフローは、マザーボードに対してファンが垂直に位置するタイプなので、基本的に背が高くなります。メリット・デメリットとしては、次のような点があげられます。
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このように、CPUクーラーで薄型となるのは、基本的にトップフローのタイプとなります。ただし、先に少し触れていますが、トップフローでも大きな放熱フィンを搭載していて背が高くなっている製品もあるので、スペックにある「高さ」は必ず確認しましょう。
なお、サイドフローのCPUクーラーでも、冷却ファンをサイズの小さいものとして、背の高さを抑えているものもあります。具体的には、120㎜ファンを搭載しているものが多い中、92㎜ファンとしているものもあります。なので、背の低いサイドフローにこだわるなら、搭載されているファンのサイズが小さいものにしましょう。
マザーボードのCPUソケットを確認
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最近では、複数のCPUソケットに装着できるマルチソケット対応となっているCPUクーラーが多くなっています。ただし、CPUクーラーによって対応するソケットの詳細は異なりますし、非対応のソケットもあります。なので、使用するマザーボードのCPUソケットは必ず確認しましょう。
CPUのTDPに対応するCPUクーラーにするのが基本
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CPUクーラーのスペックに「TDP:≦100W」といった記載があるものがあります。この「TDP」は「Thermal Design Power」の略で、日本語では「熱設計パワー(熱設計電力)」です。簡単に言うと、CPUの設計上想定される最大放熱量で、発熱量や消費電力のおおまかな指標となります。CPUの性能が高くなるほど、TDPも高くなります。
「TDP」はCPUのスペックにも記載されているので、これに対応する(もしくは上回る)CPUクーラーにするのが基本です。ただし、CPUクーラーによっては、スペックに記載のないものもあります。なので、あくまで指標のひとつと捉えればよいでしょう。
固定方式はバックプレート式が良い
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CPUの固定方式のひとつに、バックプレート式があります。これは、取り付けに工具が必要となりますが、マザーボード裏面からプレートで支えるため大型で重いCPUクーラーも確実に固定でき、マザーボードが反りにくいというメリットがあります。最近のCPUクーラーでは、このバックプレート式を採用しているものがほんどです。
ただし、バックプレートがマザーボード背面の周辺部品と干渉する可能性がある、というデメリットともあります。
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「バックプレート式」の他に、プッシュピン式(上の写真)、フック式(下の写真)もあります。
プッシュピン式とフック式は、工具が不要で着脱が可能。しかし、ピンやフックを引っ掛けるツメが破損しやすく、取り付けの圧力でマザーボードが反りやすいというデメリットがあります。
その他に、シンプルにネジによって固定する製品もあります。
冷却効率を重視してヒートパイプを採用した製品に
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上の写真のパイプが「ヒートパイプ」で、中には作動液(揮発性の液体)が入っています。作動液はCPUを冷却して、同時に温められて気化し、放熱フィン & 冷却ファンのある方に送られて、そこで冷却されて液化し、再びCPUのところに戻る、というように循環します。こうすることで、CPUの熱を大型の放熱フィン全体に伝えて、効率良く冷却できます。
ですので、効率的な冷却を実現するためには、ヒートパイプを採用した製品を選ぶと良いでしょう。
ファンの風量、回転数、ノイズレベルをチェック
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CPUクーラーに付属しているファンの性能について、以下の点をチェックしましょう。
そして、ファンは直径と厚みが大きければ、同じCFMでもrpmを抑えることができて、dB(A)が小さくなります。
製品によっては「流体軸受」のファンを採用しているものもあります。流体軸受は、モーターの回転軸を流体(油や空気など)によって受ける方式で、摩擦が少なく、回転がより滑らかになります。これにより、耐久性と静音性が向上するので、この点も要チェックです。
【薄型トップフロー】CPUクーラー おすすめ
ここからは、薄型トップフローのCPUクーラーのおすすめ製品を紹介していきたいと思います。
なお、後半ではサイドフローのタイプで高さを抑えた製品も紹介していますので、参考にしてください。
アイネックス IS-30A
【高さ30㎜、TDP:≦100W】ヒートパイプは4本でダイレクトコンタクトを採用、1ボール1スリーブベアリングのファン
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直径6mmの銅製ヒートパイプ4本を搭載した製品。ヒートパイプはニッケルメッキ処理されていますが、銅を露出させた部分がCPUコアに直に接触する「ダイレクトコンタクトヒートパイプ」を採用し、CPUからの熱を効果的に放熱フィンに移動させて大きな冷却効果を実現します。
92㎜の冷却ファンには、1ボール1スリーブベアリングを採用。これは、1つのボールでファンの軸を支える構造で、軸を“点”で支えるため、抵抗と磨耗が少なく、滑らかに回転しします。
アイネックス CC-01
【高さ32㎜】Intel LGA115X用、銅製コアを採用、固定はバックプレート式
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Intel LGA115x用で(AMDには非対応)、放熱フィンと冷却ファンという(ヒートパイプは不採用の)シンプルな構成のクーラー。それでも、ヒートシンクのCPUと接する部分には、熱伝導率の高い銅が採用されているので、効率的な冷却が期待できます。
固定方法はバックプレート式で、安定性を向上させています。
ID-COOLING IS-40X-V3
【高さ45㎜、TDP:≦100W】ヒートパイプは4本でダイレクトコンタクトを採用、冷却ファンの防振ゴム付きで不快なビビり音を吸収
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直径6mmの銅製ヒートパイプ4本を搭載し、それらを含めてオールブラックにカラーリングされた製品です。ヒートパイプはCPUコアに直に接触する「ダイレクトコンタクトヒートパイプ」で、接触部は塗装を剥いで銅を露出させ、熱を効率的に伝導させます。
冷却ファンには振動を吸収するための防振ゴムが付いていて、ファンの回転時に発生する不快なビビり音を防止してくれます。
Thermalright AXP90 X47
【高さ47㎜、TDP:≦135W】ヒートパイプは4本、固定はバックプレート式
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ニッケルメッキ処理がされた銅製ベースに、同じくニッケルメッキ処理がされた4本のヒートパイプ、そして冷却ファンからなる製品です。ヒートパイプは、熱伝導効率を上げるために、放熱フィンにハンダ付けされています。
紹介しているカラー以外に、ブラック、ホワイトがあります。また、放熱フィンが銅製のモデル(冷却ファンはオレンジ)もあります。
ID-COOLING IS-55-BLACK
【高さ55㎜、TDP:≦125W】ヒートパイプは5本、CPUと直接接触するベースは全銅製、向きによって干渉を回避、固定はバックプレート式
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5本のヒートパイプを搭載し、CPUと直接接触するベースは全銅製として、熱伝導の効率を高めた製品です。そして、製品の取り付ける向きによって、マザーボード上のメモリなどとの干渉を回避できるようになっています。固定方法にはバックプレート式を採用し、取り付けの安定性を向上させています。
Thermalright AXP 120 X67
【高さ67㎜】ヒートパイプは6本、干渉を防ぐオフセット設計、固定はバックプレート式
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ニッケルメッキ処理がされた6本のヒートパイプを搭載した製品です。特徴的なのは、放熱フィンが段差のある構造となっていて、マザーボード上のメモリやヒートシンクなどの干渉を防ぐ「オフセット設計に」なっていることです。固定はバックプレート式で、安定性を向上させています。
ちなみに、カラーがブラックまたはホワイトで、冷却ファンにARGB LEDが仕込まれているモデルもあります。
DeepCool AN600
【高さ67㎜、TDP:≦180W】ヒートパイプは6本、 ヒートシンクの向きで干渉を回避、固定はバックプレート式
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6本のヒートパイプで熱を伝導させる製品です。放熱フィンが片側に寄った構造となっていて、取り付ける向きによって、マザーボード上のメモリなどとの干渉を回避できるようになっています。固定は、安定性の向上が見込めるバックプレート式です。
【高さを抑えたサイドフロー】CPUクーラー おすすめ
参考として、高さを抑えたサイドフロー型CPUクーラーのおすすめ製品を紹介していきたいと思います。
SilverStone SST-KR03
【高さ152㎜】ヒートパイプは2本で千鳥配置、青色LEDファンを装備
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2本のヒートパイプが千鳥配置(冷却ファンに対して重ならないように配置)された製品で、各ヒートパイプにエアフローが最大限に当たることで、最適な冷却性能が得られます。冷却ファンには青色LEDが装備されていて、PCの電源ONでブルーに発光します。
アイネックス SE-914-XT-BASIC-V2
【高さ126㎜、TDP:≦150W】ヒートパイプは4本でダイレクトコンタクトを採用、放熱フィンをベースから後方にオフセット、固定はバックプレート式
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ヒートパイプは4本で、ニッケルメッキ処理されていますが、冷却効率を上げるため、銅を部分的に剥き出しにしてCPUと直に接触させるダイレクトコンタクト方式となっています。そして、放熱フィンはベース部分から後方にオフセットさせて、メモリと干渉しないよう配慮。固定はバックプレート式で安定性を高めています。
upHere A94K
【高さ132㎜】ヒートパイプは4本でダイレクトコンタクトを採用、デュアル冷却ファン、干渉しないのクリアランス、固定はバックプレート式、黒で統一されたデザイン
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4本のヒートパイプを搭載し、銅を露出させた部分を台座底面に配置してCPUと直に接触する「ダイレクトコンタクト」とした製品です。さらに、92㎜ファンをデュアル構成で搭載し、冷却性能を高めています。ス固定は、安定性の高いバックプレート式。
そして、マザーボード上のメモリなどと干渉しない十分なクリアランを確保。デザイン的には、放熱フィン、ヒートパイプ、冷却ファンなどを黒で統一し、質感を高めています。
おわりに
今回は薄型のトップフロー型CPUクーラーと、参考として高さを抑えたサイドフロー型CPUクーラーを紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
技術の進歩で電子パーツは小型化が進み、それに伴いPCケースも小さなものがたくさん登場しています。なので、上記を参考にして、小さなPCケースに対応する薄型CPUクーラーを導入してみてください。