



自作PCユーザーで、CPUのオーバークロックをしていたり、ハイエンドのグラフィックボードを搭載している場合に頭を悩ませる問題のひとつ、発熱。ケース内が高温になればPCの安定動作は望めないため、冷却ファンを増設してエアフローの工夫・改善を図ることは必須と言ってもいいでしょう。
そこで検討してみたいのが、PCIスロットに取り付けるタイプのファン。これなら、既にケース前面や背面などにファンがある場合でも増設が可能。また、グラフィックボードなどPCIe接続のパーツに近い位置から効果的に送風または排気をすることもできます。今回は、そんなPCIスロットタイプのファンを選ぶポイントを説明したうえで、おすすめ製品を紹介していきたいと思います。
PCIスロットタイプのファンの選び方
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それでは、PCIスロットタイプのファンの選び方を、以下に見ていきましょう。
小型PCケースの場合は、PCIスロットがロープロファイルかどうかを確認
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「PCI」は「Peripheral Component Interconnect」の略で、CPUと周辺機器(ペリフェラル)との間をつなぐ通信を行うバスアーキテクチャのひとつ。これに対応するPCIカードを差すのが「PCIスロット」になります。
そして、PCIを小型化した規格が、ロープロファイル(Low Profile)です。規格の幅は、従来のPCIはボード312(または173)×107㎜/ブラケット120㎜でしたが、ロープロファイルではボード120(または168)×64㎜/ブラケット80㎜と、かなりコンパクトになっています。小型PCケースの中には、PCIスロットがロープロファイルのものがあります。
PCIスロットタイプのファンにもロープロファイルに対応しているものがあるので、取り付けるPCケースがロープロファイルかどうかを確認したうえで、対応する製品を選びましょう。
プロペラファンとシロッコファンの違いを理解して選ぶ
以下に、プロペラファンとシロッコファンの構造の違いと、それぞれのメリットとデメリットを見ていきます。
プロペラファンは「プロペラ」、そのメリットとデメリットは
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プロペラファンは、説明するまでもありませんが、プロペラが回転して風を送るファンです。
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プロペラファンのメリットとデメリットとしては、次のような点があげられます。
シロッコファンは「筒状の羽」、そのメリットとデメリットは
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一方のシロッコファンは、筒状の羽が回転して空気を吸い込み、ダクトから排気する、という構造のファンです。PCIスロットタイプのものは、ケース内の熱い空気を外に排出するための製品になります。
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シロッコファンのメリットとデメリットとしては、次のような点があげられます。
ですので、ケース外への排気・ケース外からの吸気を行う別途ファンがあるか、ノイズレベルをどこまで抑えたいかなどを考慮して、プロペラファンとシロッコファンのどちらにするかを検討しましょう。
冷却性能と静音性のバランスで選ぶ
以下は、PCIスロットタイプに限らず、ファン全般に言える選ぶ際のポイントになります。
CFM(風量)は、ファンのサイズ(直径、厚み)とrpm(回転数)に比例する
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ファンの冷却性能の指標のひとつにCFM(Cubic Feet per Minute)があります。これは風量の単位で、1分間にどれくらいの体積(立方フィート)の気体を送れるか、という意味。この値が大きいほど、ファンの冷却性能が高いということです。
そして、ファンのサイズ(直径、厚み)が大きいほど、またrpm(Revolution Per Minute:1分間に何回転するか)が大きいほど、CFMも大きくなります。
rpmが上がれば、ノイズレベルも上がる
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ただし、rpmが大きくなればファンの回転音と風切音が増して、ノイズレベル(dB(A):デシベル)が大きくなってしまうことに…。あまりにノイズが大きいと、実用的ではありませんね。
大きいサイズのファンは、静音性に優れている
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CFMが同じならば、大きいサイズのファンの方がrpmを低く抑えられるので、ノイズレベル(dB(A))も小さくて済み、静音性が高くなります。
ですので、製品の上記のようなスペックを確認し、冷却性能と静音性のバランスを考えて、購入するものを選ぶと良いでしょう。
「静音ファン」と謳っている製品は、おおむね20dB(A)以下のものが多いようです。ちなみに筆者の経験で言うと、15dB(A)以下であれば、ほとんどノイズは聞こえませんね(個人差あり)。
ノイズレベルの単位「dB(A)」は、耳で感じるうるささの程度
ノイズレベルの単位は、「dB」だけの場合、正確には人間の耳には聞こえない超低周波・高周波も含まれます。「dB(A)」は、人間の耳に聞こえる範囲の周波数帯をピックアップするA補正という聴感補正をかけたもので、簡単に言うと「耳で感じるうるささの程度」。ただし「dB(A)」を簡略化して、単に「dB」と表記することもあります。読み方は、どちらも「デシベル」でOK。
プロペラファン PCIスロットタイプのおすすめランキング
ここからは、おすすめ製品をランキング形式で発表していきたいと思います。
まずは、プロペラファンのおすすめ5製品のランキングを発表して、その後にシロッコファンのおすすめ5製品のランキング発表と続きます。
第1位:NBROS PCIスロット用80㎜ファンステイ PRO ファン1台セット
ファンの設置位置の微調整が可能、ゴム製のワッシャを採用した防振固定金具
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PCIスロットに80㎜ファンを設置するステイに、XINRUILIAN社のX-FAN 80㎜ファン(RDL8025SL)がセットになった製品。ステイには奥行き方向に2段階(10㎜)のネジ穴と、左右方向約12㎜の長いネジ穴があり、ファンの位置を微調整できます。
また、1.6㎜厚のSPCC鋼板を採用したフレームと、ゴム製のワッシャを採用した防振固定金具で、ファンをしっかりと固定し、ブレによる不快な振動音を防止してくれます。
なお、ステイには92㎜ファンを取り付けるネジ穴も空いているので、そちらに交換することも可能です。
紹介している製品の他に、80㎜ファンが2基のモデル、120㎜ファンが1基のモデル、120㎜ファンが2基のモデルもあります。
第2位:長尾製作所 M.2 SSD変換PCI用ファンステイ 80mm薄型ファン1台付属
薄型80mmファンが付属、M.2 SSDをPCIスロットに装着してる場合に最適
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PCIスロット用のファン用ステイと、XINRUILIAN社のX-FAN 80㎜ファン(RDL8015S)のセット。このファンは厚みが15㎜と薄型なので、M.2 SSDをPCIスロットに装着してる場合など、他のパーツとの干渉が心配される場合に最適と言えますね。
ちなみに、ファンが3基のモデルもあります。
長尾製作所 PCI用8015ファン3連ステイ
3,001円(税込)
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第3位:TITAN デュアルX Houlder 2ファン TTC-SC07TZ(RB)
フレームを組み替えることで、エアフローのレイアウト変更が可能
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2つのファンを、水平配置で使用してビデオカードなどを冷却することはもちろん、ファンを固定するフレームを組み替えて直角にレイアウトすることも可能です。この直角のレイアウトなら、マザーボード上のチップなどを冷却するのに効果的でしょう。
また、PCIブラケット部にダイヤル式のファンコントローラーが内蔵されているので、回転数を変化させて風量とノイズレベルを調整することができます。回転数を最小にすれば、ノイズレベルは15.0dB(A)まで抑えられるので、かなりの静音効果ですね。
第4位:AsiaHorse GCC-black-JP
3基の80㎜ファンで冷却、RGB対応のLEDが発光
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3基の80㎜ファンが搭載された製品で、フルサイズのグラフィックボードを冷却することができます。
カバー部分にはRGB対応のLEDが搭載されており、各社のマザーボードのコントローラーで制御することが可能。サイドがアクリル/強化ガラスウインドウのPCケースに取り付けて、イルミネーションを楽しむことができます。
なお、PCケースへはステーをネジで留めて固定するのですが、そこにPCIスロットカバーはありません。なので、PCIスロットカバーは別途用意する必要があります。
第5位:Jonsbo VGAグラフィックカードクーラー VF-1
5,300円(税込)
※ファン1基あたり
80㎜ファンが3基、カバー部分のLEDが発光、カバーに1.2㎜厚のアルミを採用
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3基の80㎜ファンを水平にレイアウトした製品。このファン配置により、フルサイズのグラフィックボードでも、まんべんなく冷却できます。
カバー部分にはRGB対応のLEDを搭載。対応マザーボードを使用している場合はRGBユーティリティにより、発光の制御が可能となります。非対応マザーボードの場合でも、ディップスイッチによって発光のカラーリングを変更することが可能です。
第6位:PANO-MOUNTS PCI用9025グラフィックカードファン3連
92㎜ファンが3基、付属の5V/7V/12Vの分岐配線で回転数を制御
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3基の92㎜ファンをステーで連結した、とてもシンプルな製品。サイズからして、フルサイズのグラフィックボードの冷却に適しています。
回転数の制御は、付属の5V/7V/12Vの分岐配線で行う仕様となっており、5Vで40%(静音重視)、7Vで60%(中間で、比較的静か)、12Vで100%(冷却重視)になります。
ちなみに、ファンが2基のモデルもあります。
PCI用9025グラフィックカードファン2連
1,980円(税込)
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第7位:Anidees グラフィックカードクーラー
6,700円(税込)
デュアルリングRGBの80㎜ファンが3基、付属のリモコンでコントロールが可能
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デュアルリングRGBの80㎜ファンが3基搭載された製品。各ファンは、12個の独立したRGB LEDが装備されているので、レインボーカラーにしたり一色で固定したりなど、彩り豊かな発光をしてくれます。
そして、この製品にはリモコンが付属しているのが大きな特徴です。これでファン速度とLEDモードをコントロールすることができます。気分によって、発光を変えてみるのも面白いですね。
もちろん、マザーボードに接続して、PWMでのファンの回転数とLEDの制御をすることも可能となっています。
シロッコファン PCIスロットタイプのおすすめランキング
続きまして、シロッコファンのおすすめ5製品のランキングを発表していきたいと思います。前述のように、PCIスロットタイプのものは、ケース内の熱い空気を外に排出するための製品です。
第1位:Sanpyl PCI冷却ファン
28.0CFMと十分な風量、静音モデル、価格とのバランスがとれた良製品
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風量は28.0FMと十分で、ノイズレベルは20.0dB(A)と静音性があり、価格は上記のように比較的お手頃なので、これらのバランスがとれた非常にコストパフォーマンスに優れた製品と言えるでしょう。
第2位:AINEX RSF-06A
静音性に優れた、低価格の製品
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ノイズレベルが20.2dB(A)と、静音性に優れた製品となっています。また、価格が抑えられているので、比較的導入しやすいのではないでしょうか。
ただ、風量が5.46CFしかないので、発熱がシビアなPCだと、この製品だけでは冷却が間に合わないかもしれません。
第3位:AINEX RSF-04
貴重なロープロファイル対応製品
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PCIスロットタイプのファンでは珍しい、ロープロファイルに対応した製品。スリムタワーPCケースで、ロープロファイルPCI接続のパーツしか増設できない場合などに、この製品が活躍しますね。
ただし、ロープロファイル対応であるが故に、ファンサイズも小さくなり、風量は2.06CFMと他と比べてかなり見劣りし、ノイズレベルは26.8dB(A)と静音性に優れているわけでもありません。それでも、ロープロファイル対応製品では他に選択肢がないので、これを選ばざるを得ないですね。
おわりに
今回は、PCIスロットに接続するタイプのプロペラファンとシロッコファンを紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
PCパーツの性能向上と比例して起こる発熱問題を解決することは、自作PCユーザーの永遠のテーマと言って過言ではありません。そのテーマに、今回紹介したファンを導入するなどして敢然と向き合って、是非クールで高性能なPCを組み上げてくださいね。