自作用のPCケースのサイズで最もスタンダートなのが、おそらく“ミドルタワー”でしょう。やはり、拡張性がそれなりにあって、設置にそこまで広いスペース必要がないですからね。
というわけで今回は、ミドルタワーPCケースの選び方についての説明をしつつ、ECサイトで販売されている製品の中から選んだおすすめを紹介したいと思います。
ミドルタワーPCケースの選び方
最も一般的なマザーボードのフォームファクタであるATXに対応するのが、ミドルタワーPCケースです。それではここから、ミドルタワーPCケースの選び方を見ていきましょう。
より小さいミニタワーPCケースの場合、ATXよりも小さいMicro-ATXなどのマザーボードを組み込むことになります。サイズ等は、ATXも含めると以下にようになります。
コスパ優先 or スペック優先で選ぶ(価格帯で選ぶ)
PCケース全般に言えることですが、製品は大きくコスパ優先のモデルと、スペック優先のモデルに分けることができます。
前者は、主に初心者向けで、スペック的にはさほど高くなく、その分価格が抑えられていて入手しやすくなっています(安いものだと、4,000円以下のものもあります)。
後者は、主に中・上級者向けで、基本スペックが高く、さらに付加的な機能のあるものもあります。ただし、その分価格は高くなります(1万円以上や、中には2万円以上するものもあります)。
サイドパネルの仕様で選ぶ
PCケースのパネルの仕様には、主に次のものがあります。
仕様 | 概要 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
防音パネル | スチール製のパネル内側に、遮音材が貼られている。 | 静音性が高い。 | 内部パーツを鑑賞することができない。 |
アクリル・強化ガラス製サイドパネル | サイドがアクリル・強化ガラス製のウインドウになっている。 | LED搭載のパーツを組み込んで、イルミネーションを楽しめる。 | 静音性は高くない。 |
メッシュパネル | パネルにメッシュが採用されている。 | 通気性に優れる。 | 内部のノイズが外に漏れやすい。 |
通常仕様 | スチール製のパネルが、そのまま取り付けられている。 | 価格が安い。 | 内部パーツを鑑賞することができない。 静音性は高くない。 |
内部を鑑賞したいならアクリル・強化ガラス製サイドパネル
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サイドパネルがアクリル・強化ガラス製の透明なウインドウになっている製品なら、内部に組み込んだパーツを鑑賞することが可能。こうしたPCケースに、LEDが付いたグラフィックボードやファン、それらの発光をコントロールできるマザーボードを搭載すれば、LEDのイルミネーションを楽しむことができます。
アクリルと強化ガラスのメリットとデメリットについて、普通のガラスも含めて比較すると次のようになります。
アクリル | 強化ガラス | 普通のガラス | |
---|---|---|---|
強度 | ◎(割れない) | ◯(割れにくい) | △(割れる) |
キズ | × | ◯ | ◯ |
重量 | ◎(軽い) | △(重い) | △(重い) |
静かさを求めるなら防音パネルを搭載したものに
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PCケースを囲うスチール製のパネルが、内側に遮音材が貼られた防音パネルになっているものなら、ファンやHDDなどのパーツが発する音が外に漏れるのを遮ってくれます。なので、たとえば映画や音楽鑑賞の際に、PCのノイズを極力減らしたい場合などには、防音パネルを搭載したものにすると良いですね。
メッシュパネルで最大限のエアフロー効果
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PCケースのフロントやトップのパネルがメッシュ仕様のものなら、新鮮な外気の取み込みや、内部の熱せられたエアーの排出が効率的に行えて、内部パーツをより冷却することができるようになります。なので、高性能なパーツを組み込んで、その冷却を重視する場合には、パネルがメッシュ仕様のものを選ぶと良いでしょう。
ただし、メッシュのものは遮音性がかなり低くなるため、使用するパーツはノイズを抑えた静音仕様のものにすることをオススメします。
ドライブベイの数はこだわらなくても可
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SSDやHDDを搭載するドライブベイの数については、特にこだわる必要はないと言えます。最近のSSDやHDDは1台当たりの容量が大きいので(1TBや2TBなど)、複数台を設置せずとも、通常使うくらいのデータを保存するには1台か2台で十分だからです。
また、近のPCケースでは5.25インチベイ(DVDドライブ等のためのベイ)を搭載していないものが多くなっています。最近は動画サイトや配信サービスの普及により、CDやDVDを使う機会が減っているので、5.25インチベイがなくても困らないですからね。もし、「古いCDのデータ読み込みたい」という場合でも、USB外付けのDVDドライブを活用すればよいので、やはり5.25インチベイはなくても可です。
デュアルチャンバー構造が基本
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「デュアルチャンバー構造」とは、PCケースの内部を大きな熱源ごとに区分けして「小部屋」(チャンバー:chamber)をつくり、それぞれでエアフローを設計して冷却を効率化させる仕様をいいます。一般的には、上部のCPUとグラフィックボード、下部の電源ユニットとHDDで区分けされています。
特に、最近はグラフィックボードが高性能になって発熱が大きいこともあり、この構造のPCケースが一般的になっています。なので、デュアルチャンバー構造の製品を選ぶのが基本と言えます。
ファンが多ければ冷却性能に優れる
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PCケースには、初めから冷却ファンがいくつか搭載されているのが一般的です。そして、この冷却ファンの搭載数は、製品によってもちろん異なり、冷却ファンの数が多い方が冷却性能に優れています。
なので、冷却性能を重視するなら、予め搭載されている冷却ファンの数が多い製品にしましょう。
各パーツの最大寸法を確認
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CPUクーラーやグラフィックボードなどのパーツは、製品によってもちろん外形寸法が異なります。そして、ミドルタワーPCケースでも、搭載できるCPUクーラーの最大高さ、グラフィックボードの最大長さなどが違っています。
なので、使用するパーツの外形寸法をあらかじめ確認して、それが搭載可能なミドルタワーPCケースを選びましょう。
【コスパ優先】ミドルタワーPCケース おすすめ
それではここから、ミドルタワーPCケースのおすすめ製品を紹介していきたいと思います。まずは、コスパ優先のモデルを紹介し、その後にスペック優先のモデルと続きます。
ZALMAN T8
やや古い設計のモデルでもビジュアル的には良き、コスパは最高
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内部のレイアウトを見ると、電源ユニットの設置スペースがケース上部にあり、デュアルチャンバー構造ではないなど、少し古い設計のモデルと言えます(一昔前は、こうしたレイアウトが一般的でした)。また、サイドパネルがスチールなので内部パーツの鑑賞はできず、メッシュパネルも採用されていないので通気性は普通です。
ですが、全体にブラックのパウダーコーティングが施されおり、フロント下部にデザイン性のあるRGB LEDを配しているので、ビジュアル的には悪くない印象です。そして、コスパがとても良い製品となっているので、古い設計などを気にしないユーザーであれば、かなりお買い得ですね。
MSI MAG FORGE 110R
サイドはアクリル、フロント・トップはメッシュ、リアにARGBファン、シンプルデザイン、コスパが優秀
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サイドがアクリルで、フロントとトップがメッシュパネルというエアフローを重視した製品。トップにはマグネットによってフィルターが取り付けられているので、埃の除去も簡単です。
そして、リアには、ARGB(Addressable RGB)対応の冷却ファンを標準搭載。対応するマザーボードに接続することでイルミネーションを制御することができます。デザイン的にはシンプルですが、洗練された印象があって飽きずに長く使えそう。コスパも優秀ですね。
ただ、サイドのアクリルが手回しネジ4つで留められているので、取り付け・取り外しに少し手間がかかりそうです(この価格なので仕方ないかな…)。
Thermaltake Versa H26
サイドはアクリル、拡張性を確保、フロントパネルはメッシュ仕様、標準でファンが2基
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低価格帯に位置する製品ですが、サイドパネルはアクリル製、ドライブは最大7基、ファンも最大7基が搭載可能という、それなりの拡張性を有した製品となっています。また、フロントパネルはメッシュ仕様で、標準でフロントとリアに120㎜ファンが1基ずつ搭載されているなど、エアフローにも配慮がされています。
だだし、コストを抑えるためか、アクリルウインドウの固定が4つの手回しネジなので、内部へアクセスするのに少し手間がかかります。
紹介しているのはブラックで、他のカラーバリエーションとしてホワイトもあります。
ZALMAN S4 Plus
トライカットデザインのフロントパネル、3基の120mm RGB LEDファンを標準搭載、コスパの良い製品
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サイドパネルはアクリル製で、フロントパネルの「トライカットデザイン」が特徴的なPCケース。まあまあのインパクトがあるので、好みが分かれるかもですね。
そして、標準でRGB LEDファンがフロントに2基、リアに1基搭載されています。フロントの左半分くらいがメッシュになっていて、そこからファンの光を鑑賞することが可能です。
Thermaltake S200 TG
サイドは強化ガラス、フロントメッシュパネルで高いエアフロー効果、フロントにARGBファンが3基
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サイドパネルは強化ガラス製で、高いエアフロー効果のためのフロントメッシュパネルと、その奥にARGB(アドレサブルRGB)ファンを3基搭載した製品です。ファンの発光は、対応する各社マザーボード(ASUS、ASRock、GIGABYTE、MSI)からコントロールすることが可能です(マザーボードに5V RGBコネクタが必要)。
ケースのトップとボトムにはダストフィルターが装備されていて、ホコリなどの内部への侵入を防止し、ホコリによる配線ショートなど故障のリスクを軽減してくれます。
紹介しているのはブラックで、他のカラーバリエーションとしてホワイト(Snow Edition)もあります。
Cooler Master MasterBox MB600L V2
フロントのヘアライン加工がエレガントな印象、電源ユニットは上下どちらでも設置可
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フロントパネルにヘアライン加工が施された、エレガントな雰囲気のPCケース。フロントパネルの下部にあるメーカーの「ヘキサゴンロゴデザイン」は、LED付きの冷却ファンを内側に搭載することで、その光を透過させて楽しむことができます。また、フロントパネルの両サイドにはメッシュの給気口が設けられているので、冷却のための新鮮なエアーを十分に取り込むことができるようになっています。
そして、下部のチャンバーの電源ユニットのちょうど上のところ(PSUシュラウド)に通気口が設けられているので、電源ユニットのファンを上向きにしても設置することができます。これは珍しいのではないでしょうか。
Thermaltake H200 TG RGB
サイドは強化ガラス、フロントにRGBのLEDバー搭載、19種類のライティングモード、スイングドアパネルで内部アクセスが容易、CPUクーラーの高さは180㎜まで
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サイドパネルは強化ガラス製で、フロントパネルの縁に配置されたRGB LEDバーと、その横のやはりRGB LEDのロゴマークが印象的な製品です。これらの発光は、I/Oポート部(トップの前側)にあるコントロールスイッチを操作することで、19種類のライティングモードから選べます。
CPUクーラーの高さは180㎜までと、他の製品より大きめなものにも対応。サイドパネルは強化ガラス製で、スイングドアとなっているため開閉が非常に容易です。ただし、スイングドアを開けたときに、ケース横にそれなりのスペースが必要になります。
紹介しているのはブラックで、他のカラーバリエーションとしてホワイト(Snow Edition)もあります。
【スペック優先】ミドルタワーPCケース おすすめ
続きまして、スペック優先のミドルタワーPCケースのおすすめ製品を紹介していきたいと思います。こちらは価格が少しお高めになります。
CORSAIR 4000D
サイドは強化ガラス、高エアフローに最適化されたメッシュ状のフロントパネル、アンチボルテックスファンを搭載、サイドパネルの脱着はスライド式
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メッシュ状のフロントパネルが大きな存在感を示す製品。これは高エアフローのために最適化されています。また、フロントにはファンを2基搭載。これはアンチボルテックス(隣接する2つのファンを逆回転にしてボルテックス〔渦巻き〕効果を抑制し、エアフローを集中させる仕組み)で、冷却効率がアップします。
サイドパネルは強化ガラス製で、脱着はスライドさせるだけと簡単。グラフィックボードの垂直搭載にも対応しています(ライザーケーブルが別途必要)。「CORSAIR RapidRoute ケーブル管理システム」を採用し、配線もきれいに処理できます。
紹介しているのはブラックで、他のカラーバリエーションとしてホワイトもあります。
Antec P10C
防音パネルを採用、フロントパネルは左右どちらの開閉にも対応、電源ユニットカバーにファンを搭載可能
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フロント、両サイド、トップに防音パネルが採用された製品。フロントパネルは、開閉方向が左右どちらにも設定できるので、環境に合わせて邪魔にならないようにできます。
標準でファンがフロントに120㎜×3、リアに120㎜×1と多めに搭載されているのですが、さらに電源ユニットカバーにも120㎜のファンを1基搭載することも可能。大型の電源を使用する場合には、ファンを追加すると安心感がもてますね。
Fractal Design Pop Silent
防音パネルを採用、「オープンレイアウト」で高エアフロー、静音ファン「Aspect 12」が3基
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防音パネルをフロント、両サイド、トップに採用した製品。そして、内部空間を広くしエアフローを向上させて冷却性能を重視した「オープンレイアウト」を採用しています。
標準搭載のファンは、同社の静音仕様モデル「Aspect 12」がフロントに2基、リアに1基となっています。このファンの特徴は、気流の乱れの抑制する「ステータストラット」、微小な乱気流層を生み出してブレードの効率化を図る「Trip Wireテクノロジー」、配線のシンプル化を実現する「チェーン接続」への対応となっています。
ケース下部の5.25インチベイには、光学ドライブはもちろん、USBメモリーやSDカードなどを収納できる小物入れを付けることもできます(光学ドライブと小物入れは排他利用)。
Cooler Master MasterBox CM694
カーブ状メッシュパネル、モジュラー型ドライブケージ、グラボ用スタビライザー
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カーブ状のメッシュパネルがフロントからトップを覆っている製品。細かなメッシュにより、高い通気性を確保しつつも、ホコリのフィルタリング性能も高くなっています。ちなみに、このメッシュはCooler Masterのロゴをイメージした、菱形パターンになっているとのこと。
そして、モジュラー型ドライブケージを搭載していることも大きな特徴。このケージは、取り外しが容易なモジュラー型で、2段のトレイ構成となっているので、SSDとHDDを同時に搭載することができます。これを取り外すことで、大型グラフィックボードや水冷ラジエーターの設置ができるようになります。
また、大型グラフィックボードを搭載する際に、その重量を支えるスタビライザーが搭載されているので、歪みによるマザーボードへのダメージを防ぎます。
Fractal Design Define 7 Compact
防音パネルを採用、コンパクトなフレーム、トップ全体を外せる「オープンアクセス」、静音ファン「Dynamic X2」シリーズを採用
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防音パネルをフロント、両サイド、トップに採用した製品で、名称に「Compact」とあるように、ミドルタワーにしては(特に幅が)コンパクトな設計です。そして、トップ全体を取り外せる「オープンアクセス」なので、日々のメンテやパーツ交換などがやりやすくなっています。
ファンは3基が標準搭載されていて、いずれも静音仕様の「Dynamic X2」シリーズ。これは、航空機の翼にも用いられる空気力学要素を取り入れて設計されたもので、ノイズの大幅な低減が期待できます。
紹介しているのはブラックで、他のカラーバリエーションとしてホワイトもあります。
MSI MPG GUNGNIR 110R
サイドとフロントに強化ガラス、ファンは4基(ARGB)、ライティング切替ボタンを装備
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サイドパネル、そしてフロントの半分にも強化ガラスを採用した製品です。それでも、エアフローを考慮して、フロントの上下と中央にはスリット、フロントの両サイドにはメッシュが設けられています。トップはホコリを防ぐフィルターがあり、これはマグネット式なのでメンテナンスも容易です。
標準搭載のファンは4基(フロントに3基、リアに1基)で、各社マザーボードのARGBコントロールに対応。また、ライティング効果を切り替える「Insta-Light Loop機能」ボタンも装備しているので、簡単にLEDエフェクトを変えることができます。
Fractal Design Define 7
防音パネルを採用、「オープンレイアウト」と「ストレージレイアウト」に対応、クラボの垂直配置、静音ファン「Dynamic X2 GP-14」を3基搭載
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防音パネルをフロント、両サイド、トップに採用した製品です。大きな特徴は、モジュラー型となっていて「オープンレイアウト」と「ストレージレイアウト」を選べること。「オープンレイアウト」は、内部空間を広くし、エアフローによる冷却性能を向上させるもの。「ストレージレイアウト」は、多くのドライブの搭載を可能にするものです。グラフィックボードは、垂直配置することも可能です(別途ライザーケーブルが必要)。
標準搭載のファンは、同社の静音仕様モデル「Dynamic X2 GP-14」を3基。これは(前出のように)航空機の翼にも用いられる空気力学要素を取り入れて設計されたもので、ノイズを大幅に低減したモデルです。
紹介しているのはブラックで、他のカラーバリエーションとしてグレー、ブラック&ホワイト(内部がホワイトに塗装)、ホワイトもあります。
おわりに
今回は、ミドルタワーPCケースのおすすめを、コスパ優先モデルとスペック優先モデルで分けて紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
ずいぶん昔ですが、PCケースはオフィス機器のような感じで、デザイン性はあまりありませんでした。また、LED搭載のパーツはなく、“静音仕様”という概念もありませんでした。しかし、今どきはデザインで選んだり、静音というコンセプトで選んだりできて、PCケース選びがとっても楽しいですね。